眼科にまつわるニュースについて、医療従事者はどのように考えているのか? 当サイト監修・南大阪アイクリニック院長の渡邊敬三先生にお話しいただきました。
今回のニュースのテーマは「白内障手術とカルテの改ざん」。Youtube「白内障ラボチャンネル」より、内容を抜粋しご紹介いたします。
皆さんこんにちは。白内障ラボチャンネルの渡邊です。今日からですね、ちょっと新しい企画をやりたいなと思っています。
たまにですね、眼科に関わるニュースっていうのが出ることがあります。いいニュースってそんなに記憶に残らないんですけど、悪いニュースって記憶に残るんですよね。
そうした気になるニュースを、僕ら医療従事者はどんなふうに考えているのか、個人的な意見ですけども、お話していきたいと思っています。
白内障手術で失明した男性 カルテ改ざんに賠償命令
2021年4月のニュース記事で、白内障手術を受けて失明したという男性が、病院を訴えるという裁判がありました。
裁判所は『医師によるカルテの改ざんが多数あり、手術前に説明義務を果たしたとは認められない』として賠償を命じた。
手術した男性は、東京の病院で3回にわたって白内障の手術を受けました。手術前に医師から適切な説明がなく、左目を失明する後遺症を負ったとして、病院を運営する賠償を求めました。
判決で『カルテの記載は手術記録の記載と合わず体裁が不自然であることから、医師が意図的に改ざんしたと認められる。主に手術の説明に関する内容が改ざんされ、発覚しなければ医師の責任が否定されかねない悪質なもので、改ざんの箇所も多数に及んでいる』と指摘した。
そのうえで『カルテには、手術の内容やほかの治療法について説明したという記載があるが、カルテの記載は改ざんされたもので信用できない。医師が説明義務を果たしたと認められる証拠はない』として、カルテの改ざんに対する慰謝料などの賠償を命じました。
こんなニュースがありました。
カルテの改ざんは絶対に認められない
これはですね、問題点というか僕は何を思うかというと、やっぱり、どんなことがあろうとカルテの改ざんは絶対にアカンということですね。
だからこの裁判の問題点として、まずもってカルテを改ざんしたということに、ひとつ重きを置いているんですね。カルテの改ざんがなければ、もしかしたら違う結果になっていたかもしれないんですよ。
「カルテの改ざんに対しての慰謝料」を命じられたということで、そうなんですよ。
だって例えば手術を受けていただく時には合併症とかそういうお話をしますし、あるいはこのニュースの方ってちょっとご高齢の方なんですけども、場合によってはすごく白内障が進んでいるとか、あるいは目の構造的に、ちょっと組織的に弱いものがあるんじゃないかというのが疑われる場合は、「合併症のリスクがちょっと高くなりますよ」、あるいは「再手術が必要になることもありますよ」みたいなお話をすることってあるんですよね。
一般的に特に何も問題ない方が合併症を起こす確率って非常に低いですけれども、やっぱりそういう特殊な条件においては、合併症って起こりうるんです。
なので、手術が2回3回になるっていう事も、あることはあります。しかし結果として失明をしているということは、白内障の手術においては、ほとんどの場合に見られない。あるとすれば、眼内炎。急速に進行する眼内炎とか、治療に抵抗する眼内炎。
ただここで失明って書いてあるのが、「いわゆる本当に失明したのか」。裸眼で見られなくなったという意味のことを「失明」ってしちゃってることもあるのでわかりにくいんですけど。
起こったことに対して嘘なく皆さんにお話しする
結果が良くないということは残念ではあるんですけど、何よりも大事なことは「改ざんしたらアカン」ということと、起こったことに対して嘘なく皆さんにお話しするということ。これが大事なことだから、そこですね問題は。
可能性が極めて低いリスクを伝えるさじ加減
その方は判決後の会見で「先に言ってもらったら手術はしなかったのに」って言ってらっしゃっるようです。
それはどうかなぁ、「最初から言ってくれてから」といったら、じゃあ「合併症があります」ってそんなん聞いたら手術は受けませんってなってたかということなんですけど。
多分ですね、それぐらいの話は絶対するんですよ。しないことって多分ありえない。どこの病院でもそれはないと思うので。合併症が起こった場合には再手術をしなきゃいけなくなる事はある、ということぐらいは必ず言ってるはずなんですよ。
ただ、あんまり強調して喋ると怖くなっちゃうでしょう。「そんなん言われたら怖いわ」ってなっちゃうから、そのさじ加減というか、起こる可能性が極めて低いことをどれほどガッて伝えるか、みたいなこととのさじ加減と、手術後の対応ですよね。
だからもう、何か起こった時には本当になんというか、真摯に対応するということをしなきゃ、こんなことになる・・・のかなぁ。
ちょっとその、人と人との話だからやっぱり感情的になってしまう部分もあるし、難しいんですけど。このニュースでいうと、「聞いたか」「聞いてないか」、カルテ上は問題なく手術が終わってるとか言っておきながら改ざんしてた、みたいなことはやっぱり問題ですね。
電子カルテの良いところ
でも電子カルテだから、記録に残ると思うんだけどなぁ。本当の改ざんって多分できないと思う。たぶん電子カルテになってるから、そんな記録ってもっと探せば出てくるんちゃうかと。改ざんできへんのが電子カルテの良いところちゃうんかなと。必ずいじったらいじった記録って出てくるはずだから、ちょっとピンと来ないんですよね。
改ざんして、その改ざん前の記録も出てきて、「ウソばっかり言うんだよ」って話かもしれないしね。
そんな感じで「悪いことは悪い」。改ざんはしたらアカン。
ただまぁ、本当に白内障の手術って、基本的にはめっちゃ安全なものだけど、やっぱりリスクを伴うということはありますし、あまりにほっとくとリスクが高くなってしまうこともありますし、手術する時期を誤らないということも大事です。
その辺をまあ気をつけて、白内障世代になってきたら1年に1回ぐらいは眼科行ってちょっとどんな感じか見てもらってね。何もないのに別に3ヶ月1回半年に1回行く必要ないと思うけど、まぁ眼科検診の意味で行ってもらってもいいんじゃないかなと思います。
ということで、本日はカルテの改ざんについてお話をしました。本日もありがとうございました。