2021年4月に発売された眼内レンズ、Synergy(シナジー)について、当サイト監修・南大阪アイクリニック院長の渡邊敬三先生にお話しいただきました。Youtube「白内障ラボチャンネル」より、内容を抜粋しご紹介いたします。
皆さんこんにちは。白内障ラボチャンネルの渡邊です。今日はですね、シナジー(Synergy)というレンズについて、1本の動画にしてお送りしたいと思います
ハイブリッド眼内レンズ
このシナジーというレンズは、ジョンソン&ジョンソンという会社が作っています。
どういったレンズかといいますと、以前に発売されていた、今もあるんですけれども、シンフォニー(Symphony)というレンズと2焦点レンズですね、これを一緒にしたようなレンズになります。
「ハイブリッド」と言ったら聞こえがいいんですけれども、シンフォニーの良さと、2焦点レンズの良さを一緒にしたようなレンズですね。
シンフォニーというのは、焦点深度拡張型レンズといわれるもので、遠くから60cmぐらいまでピントが合いますよというレンズでした。
で、2焦点レンズというのも色々種類があるんですけども、今回は30 cmから40cmぐらいのところに一番ピントが合うというところです。
なので、遠くから60cmぐらいまでのところと、30 cm40cmぐらいのところにもピントが合うというレンズなので、非常に視力が出ると言われています。
いま使われている主なレンズとの比較
実際やってみるとですね、すごくいい視力が出ます。
いま選定療養で使われている主なレンズというのは、3焦点レンズですね。パンオプティクスとか、あとはウチのクリニックでは2焦点でもですね、50cmぐらいのところにピントが合うようなアクティブフォーカスというレンズをよく使っています。
それと比較してどうかということなんですが、前に2つの動画、アクティブフォーカスとパンオプティクスの動画を上げました。
その時はパンオプティクスで200例ぐらいあって、アクティブフォーカスも100とか150例とか、それぐらいの数のボリュームがあったのでグラフにしたんですけれども、シナジーはまだまだそのレベルまで行けていないので、グラフを出してもデータとしての信頼性という意味ではあまりないかなと思います。
遠くも近くもよく見える
なので、グラフにはしてないんですけれども、ただですね、本当によく皆さん視力が出ます。
遠くも1.0、1.2、よく見える方なら1.5。30cmぐらいのところも0.8ぐらいはほとんど皆さんが出てるかなという印象です。片目でその視力なので、両目にすると小さい字まで見えるかなと思いますね。
ただ、よく皆さんが手術後にお話しされるのが、「遠くの方の看板の字が見えへん」とか、あるいは「近くの細かい字が見えへん」とおっしゃるんですけれども、そもそもですね、今までの生活で、遠くの方の看板ってそんなに多分見られてないんですよ
遠くの方の大きい字はともかく、小さい字って見えるはずがないんです。なので、そういう字はあまり見えると期待せんといて欲しいのと。
あとは細かい字を見る時って、どうしても近寄ってしまうんですよね。ある程度、30 cm40cmほど離していただくと字は見えるんですけども、細すぎて見にくいというか、字は判別できるけど小さくてわからへん、ということはあるんです。
で、寄せて見ようと思うと距離が近くなってしまうので、今度はぼやけて見えへん、ということになるんですよ。
だから実際、字についてのこだわりっていうのはそもそもちょっとどっかに置いといていただく必要があると思うんですけども、一般的に僕たちが生活の中で必要なものについては、皆さんしっかり見れているのかなと思います。
メリットもデメリットも引き継いでいる
ただ、メリットを引き継いでいるんですけど、残念ながらデメリットも思いっきり引き継いでいます。なので、ここを本当に注意していただきたいですね。
デメリットは主に、やっぱり夜の見え方ですね。「ハローグレア」というのと、シンフォニーでよくあった「スターバースト」っていうものです。
これはもうどなたも一様に「めっちゃ出る」っておっしゃいます。
特にスターバーストですね。全体にふわーっと弾けている感じがするとおっしゃる方がちらほらいらっしゃるので、その辺ちょっと気をつけたいところかなぁと思います。
シンフォニーを僕が使わなくなった大きな理由のひとつが、シンフォニーってそもそもちょっと近くが見にくくて、60cmぐらいのところにしかピントが来ないので。
片方の目は遠くを重視。もう片方の目はちょっとだけピントを寄せて、遠くの視力は落ちるけど、その分近くがグッと見やすくなるので、両目で見たときに非常に快適に過ごせるということでしばらくやってたんですけど、スターバーストを気になさる方というのは結構いらっしゃるんですね。
もうひとつは、これもデータ上はっきり出してるわけじゃないんですけど、多焦点の場合ですね。
焦点深度曲線って波があるわけですね。 視力の良い所と悪い所で。これを単純に遠くにピントを合わせた場合には、シンフォニーの場合60cmぐらいのところにピントが合います。
じゃあそれをちょっと手前に寄せることで、その60cmの視力がそのままこっちに動いてきて、ここもクリアに見えるかというと、僕は若干落ちるような感覚がある。皆さんの検査をしていてですね。
なので、シンフォニーを使わなくなった理由は、スターバーストというものと、寄せたからといってしっかり見えるかというと、やっぱり3焦点レンズとかそういうものの方が明らかに優れている印象がありましたので、使わなくなったというところです。
夜の運転には注意
で、シナジーもスターバーストは凄い出ると。なので、夜の運転をされる方は短時間ですね。「ちょっと通い慣れた道に行く程度しか運転しないよ」とか、あるいは「やりにくければ夜の運転辞めるよ」とか。
あるいは夜景ですね、基本的には光るもの全部光ってくるので、夜景なんかを見ると綺麗すぎるっていうのが嫌やなとか。
夜に運転を長くしないといけない、特にお仕事で夜遅くなるよとか、そういう方についてはちょっと気をつけないといけないなと思います。
近視の強い方に合う
けども、視力はめっちゃいいと思います
手術後、ウチのクリニックでは3日目に初めての視力を測るんですけれども、ほとんど皆さんがもう3日後にはバーンと出ている感じ。
パンオプティクスと比べるとどうかと言われると、30cmの距離はやっぱりシナジーのほうがいいんじゃないかなと思います。
なので、やっぱり使い分けですかね。30cmとか、近くがとにかく良く見えたいという方とか。
一番合うのは近視の強い方ですね。度数的には-3から-6ぐらいの方は、やっぱり30cmの距離が見えた方がストレスは少ないかなぁと思います。
そういう意味では、パンオプティクスよりもシナジーがいいかなと。
老眼鏡や遠近両用メガネを使っていた人の場合
ただ、もともと老眼鏡を使っておられた方とかですね、遠近両用のメガネとか、遠近両用のコンタクトとか。
そういうものを使っておられた方については、30cmの距離が見えることはそんなにメリットが大きくないようにも思うので、夜の見え方が気になる場合はパンオプティクスの方がいいかなと思います。
手術を急ぐ必要はない
ということで、今日はシナジーについて少しお話ししました。まだまだちょっとわからないことがあるんですけれども、ただあんまり良いことばっかりじゃないということだけは分かっていただきたいですね。
なので、新しいレンズが出たから、白内障そんなに進んでいないのに手術するとか、そういうことはまだまだしない方がいいです。
もっと良いレンズがこの先に出てくる可能性は十分ありますので、急いでやることじゃない。いままさに生活が不便で、1年も2年も待ってられないという方は、されたらいいと思います。
目の状態としても、それから生活としても、まだ待てるという方は待った方がいい。
特にシナジーも含めた選定療養のレンズですね。こちらについてはご注意いただけたらいいかなと思います。
ということで、本日はご視聴いただきありがとうございました。