片目の白内障手術をすすめられましたが、注意点はありますか?
眼内レンズの種類をどうするか?しっかり考えてみましょう
片目の白内障手術の場合に考えておくべきことは、眼内レンズの種類をどうするかということです。
白内障手術で目の中に固定する眼内レンズには、大きく分けて単焦点レンズと多焦点レンズがあります。単焦点レンズの場合には、ピントが最も合う距離を5m以上、2~3m、1m、50cm、30cmから選択し、必要なときに眼鏡をかけます。多焦点レンズの場合には、おおむね眼鏡が不要になりますが、細かい作業をするときには拡大鏡などが必要となる場合があります。
白内障になる前の眼鏡の使用状況に応じた考え方
片目の手術の場合には、白内障になる前の眼鏡の使用状況によって考えるべきことが変わりますので、一般的な眼内レンズの選択についてよく理解したうえで、タイプ別にそれぞれ考えていきましょう。
- A.今まで眼鏡をかけたことはない
- B.若い頃は眼鏡はいらなかったけど、最近は老眼鏡を使用している
- C.若い頃は眼鏡はいらなかったけど、最近は運転用と老眼鏡を使用している
- D.若い頃から運転のときだけ眼鏡をかけているが、家の中での生活で眼鏡はいらない
- E.若い頃から近視用の眼鏡をかけており、最近は読書のときは眼鏡を外す
- F.若い頃から強度の近視で、裸眼で本を見るときは10~20cmの距離でピントが合う
A.今まで眼鏡をかけたことはない
多焦点レンズがもっともおすすめですが、単焦点レンズでは2~3mにピントを合わせると左右の目のバランスが良い状態になると思います。
B.若い頃は眼鏡はいらなかったけど、最近は老眼鏡を使用している
単焦点レンズの場合には5mもしくは2~3mにピントを合わせるのが良いでしょう。多焦点レンズを選択される場合には、近くのものを見るときには、手術をしない方の目のボヤけが気になることがあります。
C.若い頃は眼鏡はいらなかったけど、最近は運転用と老眼鏡を使用している
この場合はもともと遠視の方が多いです。単焦点レンズであれば5mないし、2~3mに合わせることをおすすめします。多焦点レンズの選択もよいですが、Bの方と同じように、手術をしない目のボヤけが気になる可能性があります。
D.若い頃から運転のときだけ眼鏡をかけているが、家の中での生活で眼鏡はいらない
軽い近視の方となるので、単焦点レンズを選択するなら2~3mないしは1mにピントを合わせると良いでしょう。なお、この場合には手術後も運転のときには眼鏡が必要となります。
手術をしない目だけで本が読めるという場合には、5mにピントを合わせるのも良いですが、左右のバランスが少し悪くなります。運転のときに眼鏡がいらなくなるというメリットはありますが、見え方に慣れる必要があります。
多焦点レンズの場合には、手術後にはほぼ眼鏡の要らない生活にある可能性が高いと考えられます。
E.若い頃から近視用の眼鏡をかけており、最近は読書のときは眼鏡を外す
30-60cmくらいのところにピントが合っている近視の方で、選択肢は様々です。2~3mのところにピントを合わせると生活は非常に楽になり、左右のバランスに慣れることができればあまり眼鏡を使わないで生活することが可能になります。しかしバランスが悪いと感じる際には、手術をしない目への眼鏡やコンタクトレンズが手術前と同様に必要になります。
手術前と同じように本を読みやすいところにピントを合わせることを選択する場合には、遠いところは眼鏡をかけるという、手術前と同じ生活になります。多くの眼科で勧められるのが、この見え方ですが、「どうせ手術をするなら、眼鏡をかけない生活がしたい」という希望があるのなら、医師と良く相談しましょう。特にコンタクトレンズの使用に慣れている方の場合には、遠くにピントを合わせることをおすすめします。
多焦点レンズを選択される場合には、手術をしない目にコンタクトレンズを装用されると、より良い見え方を実感出来るでしょう。
F.若い頃から強度の近視で、裸眼で本を見るときは10~20cmの距離でピントが合う
この場合については、Eの方にも同じことが言えますが、コンタクトレンズの使用状況によって考え方が変わります。ずっとコンタクトレンズを使用してきたという方については、単焦点レンズでは、2~3mもしくは5mにピントを合わせれば、手術をしない目にコンタクトレンズを使用し、読書時には老眼鏡を使用するという生活になります。20~30cmのところにピントを合わせれば、手術後には両目ともにコンタクトレンズが必要となりますが、裸眼でも本が読みやすいというメリットを感じることができます。
多焦点レンズを選択する場合には、手術をしない目にコンタクトレンズを使用すれば、遠くも近くも良く見える状態になります。
コンタクトレンズを使用しない方については、左右のバランスを考えると20cm程度のところにピントを合わせると良いでしょう。
もう片方の目の手術はいつになるか
手術を受けられる年齢によって少し考え方が変わってくることがありますので、以上のポイントをおさえた上で、今回手術をしないもう片方の目の白内障の手術がいつになるかということを考えておかなくてはなりません。
近いうちに手術を受ける可能性が高い場合
すでに少し白内障の症状が見られる場合には、そう遠くない未来に手術を受けられることになりますので、両目の手術が終わったときの生活を想像してレンズ選択をされると良いでしょう。特にもともと近視があり、ずっと眼鏡をかけておられた方にとっては、眼鏡から解放されるチャンスともいえるので、『今まで眼鏡かけてきたから同じようにする』ということで本当に良いのか、よく考えてみていただければと思います。
しばらくは手術を受ける可能性が低い場合
50代よりも若い方の場合には、もしかすると片目は20年後に手術をするということを考えておかなくてはなりません。
- 今ある多焦点レンズが10年後にはおそらく市場からなくなっていること
- 10年後には今の多焦点レンズの弱点とも言えるハローグレアのない調節機能付き眼内レンズが発売されている可能性があること
特に多焦点レンズを選択される方については、これらを念頭に置いておく必要があるでしょう。つまり、将来両目の手術が終わったあとには、左右で少し異なる見え方になる可能性があることを踏まえてレンズ選択を考えなければなりません。または画期的な治療法ができて、手術をしなくても治る!そんな未来がくるかもしれません。
眼内レンズの選択は、皆さんの現在・過去・未来を含めて考えるべき大事なものです。手術後の生活が今よりもっと快適に送れるよう、担当医とよく相談しましょう。
記事監修:「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師
- 2003年:近畿大学医学部 卒、近畿大学医学部眼科学教室 入局
- 2009年:府中病院 眼科、近畿大学医学部大学院医学研究科 卒
- 2011年:Brien Holden Vision Institute Visiting Research Fellow
- 2012年:近畿大学医学部 助教
- 2014年:近畿大学医学部 医学部講師
- 2016年:医療法人翔洋会 理事長 平木眼科 院長
- 2018年:南大阪アイクリニック 院長
クリニック情報
- 所在地:大阪府泉南郡熊取町大久保北3丁目174-6
- 電話番号:072-453-1750
- 診療時間:9:30~12:30、14:30~17:30
- 休診日:木曜午後、土曜午後、日曜
- 導入機器:フェムトセカンドレーザー白内障手術装置、「LenSx」、術中波面収差解析装置「ORA System」、白内障手術ガイドシステム「Verion」、超音波白内障手術装置「CENTURION VISION SYSTEM」など
記事監修
「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師
略歴
2003年近畿大学医学部眼科学教室入局。府中病院(和泉市)勤務、オーストラリア留学を経て、2014年より近畿大学医学部講師として白内障・角膜外来を担当。2016年より現職。
渡邊医師YouTubeチャンネル:
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- 所在地大阪府泉南郡熊取町大久保北3丁目174-6
- 診療時間9:30~12:30、14:30~17:30
- 休診日木曜午後、土曜午後、日曜
- 導入機器フェムトセカンドレーザー白内障手術装置、「LenSx」、術中波面収差解析装置「ORA System」、白内障手術ガイドシステム「Verion」、超音波白内障手術装置「CENTURION VISION SYSTEM」など