和歌山県橋本市「トメモリ眼科・形成外科」留守良太医師
和歌山県橋本市にある「トメモリ眼科・形成外科」。硝子体手術装置「Constellation」や、白内障手術の効率を高め術後屈折誤差を軽減する「Verion Image Guided System」など、最新の医療機器を和歌山県で初めて導入し、世界水準の最先端医療を提供しています。「患者さんとの会話を最重要視しています」という、留守良太院長にお話を伺いました。
医師略歴
- 1993年:福岡大学医学部 卒業
- 1994年:福岡大学医学部附属病院 眼科
- 1996年:近畿大学附属病院 眼科
- 1998年:トメモリ眼科・形成外科 院長
- 1999年:近畿大学附属病院眼科 非常勤講師
- 2010年:医療法人 涼悠会 理事長
- 2013年:梅北眼科 開院
- 2019年:トメモリ眼科・形成外科 いわで宮本クリニック 開院
手術の意思決定を私が直接聞かないことには理由があります
ー想像以上に大きな建物で驚きました。外来の患者さんも待合室にいっぱいで、さぞお忙しいのではないでしょうか
留守先生(以下留守):1Fが外来の眼科フロア、2Fが日帰り手術センター、3Fが副院長である妻が診療を行う形成外科になります。外来の患者さんは1日平均200人ほどです。父の代からこの場所で眼科をしているもので、地元の方は眼科に行くことを「トメモリに行く」とおっしゃいます(笑)
ー手術は年間どれくらい行っておられるのですか
留守:年間1000件にはまだ少し足りないくらいですが、手術数は増えてきていますね。手術には週3日を当てており、白内障は金曜日に平均14~15件、ほぼ日帰り手術です。硝子体や緑内障の手術は木曜日、月曜日は緊急手術になっています。
ー白内障と診断された場合、手術に際してどのようなカウンセリングが行われるのでしょうか
留守:まず、白内障を治すためには手術が必要だということをお伝えし、手術に関するあらゆる選択肢を提示したうえで、決定権を患者さんに委ねています。また、私は直接返事を聞くことはありません。患者さんのご意向が決定されましたら、スタッフに伝えてくださいとお話しています。
ー先生と相談しながらではないのですね
留守:医者が意見を伝えることにより、ご本人の考えとは異なる決断を促してしまうことになるかもしれません。私は患者さんのご意向をなによりも優先したいと考えています。また、白内障の手術では、単焦点レンズと多焦点レンズで金額が大幅に違うため、単焦点を希望していても言い出しにくくなってしまう方もおられます。返事を直接聞かないのは、患者さんに余計な気を使わせないための工夫でもあります。
ーそれは気が楽になりますね
留守:ただし、どうしても自分で決められない方もおられます。その場合は、ご家族など他者の意見を聞くようアドバイスしていますし、「手術の2週間前まではゆっくりご検討ください」とお伝えしています。そして当日、やはり怖いと思った方には、手術日の延期にも対応します。また、眼底に疾患がある方であっても、手術に適応する可能性があり、患者さんが希望される場合は、なるべく手術ができるよう方法を考えます。
両眼1.0以上への視力回はほぼ100%
ークリニックでの、多焦点レンズの割合を教えてください。また、手術によって1.0以上に改善される方は何%くらいですか?
留守:約3割の方が多焦点レンズを選ばれます。平均からすると、多いでしょうね。手術後の視力回復に関しては、両眼の場合ほぼ100%です。普通に生活する上では十分な結果が出ています。
ーそうなると、メガネが必要ではなくなりますね
留守:視力の数値はあくまでも目安なんです。私は本人がどのレベルまで見えたいのか、その感覚を大切にしています。例えば1.0ある人でも「治したいですか」「我慢できますか」と尋ねて、ご本人がやはり見えにくいので治したいという希望なら手術を行います。逆に、不便を感じていないならまだ手術は必要ないです。
患者さんによく言うのですが、白内障とは病気というより老化現象で、白髪と同じようなものです。ただ、手術で治すことができるし、生活が快適になる。それをどうするかはご本人次第です。
ー手術に関して「これに気を付けている」というポイントはありますか
留守:スピードでしょうか。手術を短時間で終わらせるのはもちろんですが、お待たせしないということが大事です。ただでさえ手術前は緊張しておられるわけですから、我々がもたもたして不安を与えてはいけません。「あっという間に終わっていた」というのが理想です。
日本で数台の最新機器も、必要なら躊躇せず導入します
ーこちらの病院では和歌山初の医療機器を多く導入されていますね
留守:「Verion Image Guided System」と「Constellation」は、和歌山で当院が最初の導入でした。Verionは高解像度のデジタル画像撮影を数秒で約千回行うことで、目の正確な情報を手術顕微鏡に表示し、より精度の高い術後結果に導きます。Constellationは白内障と硝子体手術を同時に行う事のできる装置で、従来より細やかな吸引と切開口の縮小が可能になり、患者さんの負担を軽減することができます。
白内障の手術は十分に発達したと思われていますが、新しいシステムを採用することでより質の高い医療を提供できますので、私は「結果につながる」と思えば導入を躊躇しません。
ー新しい機械やシステムは、それを使う側の勉強も大変ではないでしょうか
留守:おっしゃる通りです。医学はどんどん進化していますので、追いつくためには常に勉強が必要です。私は医療機器メーカーにも積極的にアプローチし、情報を収集しています。そうすると開発中の機材や新しい研究についての最新情報が得られますので、それが結果的に和歌山初の導入につながったのだと思います。
ちなみに機器だけでなく、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を行う先進医療実施施設としても、2008年8月に厚生労働省よりから和歌山県で初めての認定を受けています。
ー全国でも数が少ない、特殊な装置もお持ちですね
留守:「V-Link」は2018年発売の最新医療機器ですが、当時は世界で20台、日本には3台しかありませんでした。その一台が和歌山県の人口7万人弱の町にあるとは誰も想像しなかったでしょう(笑)。これは「ORA」と「Verion」という従来別々だったシステムが統合されたものです。通常では手術前の検査でレンズの度数を決めますが、ORAは手術中リアルタイムで目の情報をサーバーに飛ばし、わずかな誤差も解消するよう、正確なチューニングを行えます。そのため、術後の見え方の精度が向上するのです。術前検査で予測していたものとは異なるレンズを挿入することも考えられるため、常に1500種のレンズを準備しておかないといけません。
見える喜びを知って欲しいから、乱視矯正へのこだわりは人一倍
ー他院ではあまり見かけない「Add-onレンズ」が診療項目にある理由は何でしょう
留守:これは自分のこだわりです。私は自分が乱視なので、見えない不快感がよくわかるんです。「Add-onレンズ」は現在よりも、多焦点レンズが乱視に対応していなかった頃によく使われたもので、当院でも多焦点レンズ導入と同時に始めました。文字通りレンズをAdd-on(付け足し)することにより、ぴったりの視力が実現します。
ー希望する方は多いですか?
留守:多くはないですが、おられます。例えば本を読む距離やパソコンなど「ここにぴったり合わせたい」という場合、Add-onはそれを叶えられます。そして私の性格上「できますか?」と言われると、できませんとは言えないもので(笑)。
Add-onに限らず、メガネなしでも生活できるようにしてあげたい、クリアに見える喜びを知って欲しいと思うと、レンズも機械もあらゆる可能性に対応できるよう備えたいですし、手術もできる限りの手を尽くしたいと考えます。
ー硝子体や網膜疾患の手術も担当されていると聞きます
留守:今でこそ硝子体手術も日帰りが増えていますが、昔は大学病院に入院するのが一般的でしたし、白内障も難易度の高いケースは大学病院へ紹介していました。私はもともと硝子体と網膜を専門に学んだので、どうにか白内障も硝子体も当院で手術できないかと考え、2003年から硝子体の日帰り手術をスタートしました。これも和歌山県では初です。全国でもまだ少なかったと思います。
患者さんの話をよく聞くことが、開業以来のポリシーです
ー先生が患者さんに対して、心がけていることは何でしょう。
留守:何より大切なのは「理解」ですね。どんな病気でもそうだと思いますが、しっかりと会話することが意思の疎通につながります。患者さんの表情を見て、伝わったかどうか確認するよう、スタッフにも徹底しています。
これは私が医師になって3年目で開業したことが理由です。まだまだ修行中の身でしたが、父が亡くなり病院を継ぎました。足りない技術を身に着けるため、近大病院とこちらを週3日ずつかけもちし、外来の患者さんを診療しました。しかし当時は専門医の資格もまだ持っておらず、経験不足は患者さんとお話することでしかカバーできなかったのです。それが今でも続いています。
ー患者さんにとっては、とても良いことだと思います
留守:ありがとうございます。自分としては「早く周りに追いつきたい」と必死だったので、今も同世代に負けている意識があり、常に追いかける立場です。もっともっと上手になりたい、結果を出したいと思う気持ちが強いので、そういう意味ではコンプレックスが良い方向に働いているのかもしれません。
ー開業されて長いですが、記憶に残る患者さんはおられますか
留守:たくさんおられますが、距離ということで言えば東京から来て下さった方がおられました。若いころ、ご両親がうちの病院で手術を受けられて「そのとき良くしていただいたので、自分も手術をするならここがいい」との事でした。はるばる有難いですよね。そういうお声をいただくと、医者としてこれほど励みになることはありません。
クリニック情報
- 所在地:和歌山県橋本市市脇5-4-23
- 電話番号:0736-32-9358
- 診療時間:9:00~12:00、15:00~18:00
- 休診日:水曜・土曜午後、日曜、祝日
- 導入機器:フェムトセカンドレーザー白内障手術装置「LenSx」、超音波白内障手術装置「Centurion」、術中検査機器「VerifEye Link(ORA.VERION)」、手術用顕微鏡「LuxOR」など
クリニック情報
- 所在地
和歌山県橋本市市脇5-4-23
- 電話番号
0736-32-9358
- 診療時間
9:00~12:00、15:00~18:00
- 休診日
水曜・土曜午後、日曜、祝日
- 導入機器
フェムトセカンドレーザー白内障手術装置「LenSx」、超音波白内障手術装置「Centurion」、術中検査機器「VerifEye Link(ORA.VERION)」、手術用顕微鏡「LuxOR」など