白内障の手術を受けるにあたり、やはり気になるのは費用面。白内障の手術では、眼内レンズの種類や保険適用の有無によって、その費用は大きく変動します。こちらではそれぞれの条件別に、大まかな白内障手術の費用目安を紹介します。ご自身の条件を当てはめて、おおよその費用の参考にしてみましょう。
保険診療での白内障手術費用目安
費用に最も大きく差が出る条件は「保険が適用されるかどうか」です。できれば保険診療を希望される方は多いでしょうが、保険が適用されるのは単焦点レンズを選択した場合のみです。多焦点レンズを希望した場合は、保険適用外になります。
以下は、一般的な保険適用手術である「単焦点レンズ+超音波手術」における参考費用です。
単焦点レンズでの日帰り手術(超音波手術)費用目安
自己負担割合1割 | 片目約1万5千円 |
自己負担割合2割 | 片目約3万円 |
自己負担割合3割 | 片目約4万5千円 |
入院を伴う場合の手術費用目安
上記の費用相場は、いずれも日帰り手術を想定したものとなります。昨今の白内障の手術は、ほとんどが入院を伴わない日帰り手術です。
しかし、高血圧や糖尿病などを治療中で、内科との連携が必要な場合などには入院が必要になるケースもあり、その場合は入院に関わる費用が別途発生します。自己負担割合1割負担の方の場合の費用目安も合わせて見ていきましょう。
単焦点レンズでの入院を伴う手術費用目安(1割負担)
片目手術の場合 | 約23000円+差額ベッド+食事代 |
両目手術の場合 | 約38000円+差額ベッド+食事代 |
自己負担額の分類について
年齢や所得に応じて、保険診療の自己負担額は1割・2割・3割に分類されます。ご自身の負担割合はどれにあてはまるか、事前に確認しておきましょう。
- 自己負担割合1割
…75歳以上の方。ただし現役並み所得者(※)は3割負担
- 自己負担割合2割
…70歳~75歳未満の方、および6歳未満の未就学児。ただし現役並み所得者(※)は3割負担
- 自己負担割合3割
…6歳~70歳未満の方、および70歳以上の現役並所得者(※)
(※)課税所得が145万円以上の医療被保険者、および同一世帯内の医療被保険者
高額医療費の還付
白内障に限らず、すべての医療費において「高額療養費制度」という、医療費が高額になった場合に還付を受けられる制度があります。これは、高額な医療費が国民の生活を圧迫することのないよう定められた制度で、同一月(1日から月末まで)の窓口負担が一定の限度額を超えると、超過分が健康保険組合、協会けんぽ、または市町村など、加入している健康保険の窓口から払い戻し(還付)されるという仕組みです。
なお、限度額を超えた医療費は3か月後に払い戻されますが、あらかじめ医療機関に「限度額適用認定証」を提示しておけば、窓口では限度額までの支払いで済みます。
医療費の世帯合算について
同一月に同一世帯で発生した21,000円以上の医療費、および一人が複数の医療機関でそれぞれ21,000 円以上支払った医療費は合算することができます。ただしこれは70歳未満の場合で、70歳以上の方は全額を合算できます。
多数回該当について
過去1年以内に3回以上、上限額に達した月がある場合、4回目からは多数回と該当され、自己負担の上限額が下がります。
なお、自己負担の限度額は、年齢(70歳以上または未満)および所得水準によって変動します。以下の項目を参照し、ご自分の限度額をご確認ください。
70歳未満の方の自己負担限度額
70歳未満の方の自己負担限度額は、単純に年収と国保・健保の種類で算出できます。
70歳以上の方の自己負担限度額
70歳以上の方は計算が少々複雑になります。この数値は改定されることがありますので、常に新しい情報から計算するようにしましょう。(表内は2019年8月改定版)
自由診療での白内障手術費用目安
多焦点レンズを使用する場合は、超音波・レーザーのいずれの手術方式を選んでも保険が適用されない自由診療となります。また、単焦点レンズでもレーザー手術を受ける場合は自由診療となるのが一般的です。
以下は「多焦点レンズ+超音波またはレーザー手術」における参考費用です。いずれも日帰り手術を想定したもので、入院などが伴う場合は別途費用が加算されます。
多焦点レンズでの日帰り手術費用目安
超音波白内障手術 | 片目約40万円~60万円 |
レーザー白内障手術 | 片目約50万円~70万円 |
先進医療での白内障手術費用目安
白内障の手術には、保険診療、自由診療に加えて、先進医療という選択肢もあります。これは、厚生労働大臣が認可した先進性の高い医療技術(2019年10月現在87種)のことで、厚生労働省の認定を受けた特定の医療機関においてのみで実施されます。
先進医療にかかる手術費用は保険診療の対象とならず全額自己負担となりますが、術前術後に発生する診察や検査などには健康保険が適用されます。また、先進医療特約が付随した民間の医療保険に加入している場合、契約内容によっては費用が全額給付されることもあります。
(※2020年3月追記)多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は先進医療から除外され、保険診療+選定療養として行われることが決定しました。下記の記事を合わせてご確認ください。
片目手術と両目手術の費用目安
両目を手術する場合、費用は基本的に片目の2倍となります。片目手術を行った1~2週間後に、もう片方の目の手術が行われることが多いです。手術を片目ずつ行うのには、いくつかの理由があります。
眼内炎のリスクを避けるため
非常に稀なケースですが、白内障手術後の細菌感染により眼内炎が起こることがあります。術後数日内に発症した場合は症状が強く、迅速な処置が求められます。手術を受ける環境が感染源であった場合を仮定すると、眼内炎が両目に発症することが考えられます。片目ずつの手術は、そうしたリスクを回避することにもなるのです。
術後の違和感による生活への影響
白内障の手術後しばらくは、まぶしく感じるなど、見え方に違和感が出ることがあります。両目に違和感が出ることと比較すると、片目ずつの方が生活への影響が少ないと考えられます。
先進医療・選定療養・自由診療について、当サイト監修「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師が解説しています。Youtube動画もぜひご覧ください。
白内障手術には、費用を軽減するさまざまな制度があります
白内障手術に関する費用は、保健診療か自由診療かで大きな違いがあります。手術をするとなると、まとまった金額が必要と思われるかもしれませんが、高額医療費の還付(払い戻し)や合算、多数回など、国民の生活を圧迫しないための、さまざまな国の制度が用意されています。手術の前にしっかり理解して、早めに申請の準備などを進めておきましょう。