白内障は本来透明な組織である水晶体が加齢とともにだんだん白く濁っていく、中高年の方々を中心に発症する病気です。誰もが発症する可能性のある病気ですが、手術によって濁った水晶体と人工の眼内レンズを入れ替えることで治すことが可能です。
白内障と診断され、手術を受けるにあたり実施される検査項目から、術中検査の方法、術後の定期検査について解説していきましょう。
白内障手術前の検査目的
白内障と診断され、手術を受けることが決まった際には、水晶体の濁りの度合いやほかの目の病気の有無を調べるために、手術前に精密な検査が必要となります。眼底や視神経に病気が隠れていた場合、手術を行っても視力や見え方が思うように回復しないことがあるからです。
また、眼内に挿入するレンズの種類や度数を決めるためにも、正確な検査が求められます。手術後の見え方をより良くするために、質の高い検査を行うことが重要です。
白内障手術前の検査~検査項目・検査時間
白内障の手術の前には、さまざまな検査が行われます。
- 眼圧検査
- 細隙灯顕微鏡検査
- 眼底検査
- 屈折・視力検査
- 角膜内皮細胞検査
- 角膜曲率半径
- 眼軸長検査
- 採血・血圧検査
視力検査・屈折検査
白内障の症状のひとつに、視力の低下があります。視力検査では、裸眼視力と矯正視力の両方を測定します。また、近視や遠視、乱視などの屈折異常の有無や、程度を確認する屈折検査も行われます。
視力検査・屈折検査の結果は手術後にどの位置にレンズのピントを合わせるのが良いかの指標のひとつになります。
眼圧検査
眼圧検査では目の硬さを計測します。眼圧が正常値より高い場合は、白内障だけでなく、緑内障などほかの目の病気の可能性もあるためです。
細隙灯顕微鏡検査
水晶体や角膜に異常が無いかを調べます。また、水晶体の透明度や濁りの度合いを確認します。
眼底検査
眼底検査は、眼底の血管や網膜、視神経を観察し、緑内障や加齢黄斑変性症など視力に影響する可能性のある病気がないかをチェックし、手術後にどれくらいの視力が期待できるのかを調べるために行う検査です。眼底検査では点眼検査薬で瞳孔を開いてから行います。
角膜内皮細胞検査
角膜内皮細胞検査とは角膜の内皮細胞の数を確認する検査です。
角膜は眼球の表面にあり、光を取り込むために透明になっています。角膜には血管がないため、栄養を吸収するために水分が供給され、不要となった水分は角膜の外に排出される、水分の循環が行われています。角膜内皮細胞は水分を排出する働きを担っており、細胞の働きが悪くなったり、細胞の数が少ないと角膜に水が貯まってしまい、角膜は白く濁ってしまいます。
角膜内皮細胞は増殖する機能がなく、徐々に減り続けていく細胞です。また、白内障手術でもある程度(平均で5%程度)減ってしまいます。そのため、手術前に角膜内皮細胞の数をしっかり調べる必要があります。
眼軸長検査
目の一番表面にある角膜の頂点から、目の奥にある網膜までの長さを眼軸長といいます。眼軸長検査は手術時に挿入する眼内レンズの度数を求めるために用いられる重要な検査です。
眼軸長測定には超音波を用いた装置が使用されていましたが、近年では光を使った光眼軸長測定装置が使用されることが多く、超音波と比較して圧倒的に正確な測定ができるようになっています。現在普及している測定装置はタイムドメイン方式とフーリエドメイン方式があり、フーリエドメイン方式はタイムドメイン方式と比較し、より短時間に高効率の検査ができます。
角膜曲率半径
人によって異なる、目の大きさや目の表面の角膜の丸みを測定します。眼軸長検査とともに、最適な眼内レンズの度数選択に重要な検査です。
採血・血圧検査
手術前の検査では血圧検査も行います。手術日当日にも血圧・脈拍・体温を測定し、準備を進めていきます。
白内障手術中の検査と方法
単焦点レンズだけでなく、近年では多焦点レンズや乱視矯正レンズが普及してきました。それらのレンズの働きを効率化・最適化するために、手術中にも様々な検査が行われます。
術中波面収差解析装置を用いた検査
手術前の検査を経て、最適なレンズの度数が計測されますが、それでも手術中にわずかなずれが生じます。このずれを最小化するために、手術中に変化する目の情報をリアルタイムに計測するのが、術中波面収差解析装置です。世界中で行われた数万眼にも及ぶ白内障手術のデータが蓄積されたサーバーと手術室のコンピューターが接続されることで、最適な眼内レンズ度数や乱視度数予測が行われます。
術中イメージガイドシステムを用いた検査
手術前に撮影した目の情報をもとに手術中に目の表面の情報を解析する検査です。この装置を使えば、手術で切開すべき位置や、レンズの固定位置、乱視矯正レンズの最適な軸などの情報を、顕微鏡にリアルタイムに表示できるため、より精度の高い手術が可能になります。
白内障手術後の検査項目・定期健診
手術後にも定期的に検査が行われます。見え方に問題は無いか、視力がしっかりと回復してきているか、手術後の合併症の有無などを確認していきます。見え方に問題がないからと自己判断は禁物です。医師の指示に従い、定期健診を受けましょう。
- 視力検査
- 細隙灯顕微鏡検査
- 眼底検査
- 角膜内皮細胞検査
- 角膜曲率半径測定
- 屈折検査
質の高い正確な検査は手術後の満足のいく見え方に不可欠です
白内障の手術では、術前、術中、そして術後にもさまざまな検査が行われます。これらは手術後の見え方を追求し、手術後の生活をより良いものにしていくために大切な要素であり、質の高い正確な検査は不可欠なものです。検査は年々進化しており、その精度も高まってきています。安心して手術を受けるためにも、検査内容や医療機関の検査環境・機器の設備を事前に把握しておきましょう。