白内障の手術自体は10~20分ほどの短時間で完了しますが、手術後にはいくつかの気をつけたいポイントがあります。白内障の手術後の注意点や安静期間の過ごし方、見え方の違和感・変化について見ていきましょう。
手術直後の注意点~安静期間の過ごし方
日帰りも可能な白内障手術ですが、術後にはいくつかの注意事項があります。
- 目を押さえない
- お酒を控える
- 洗顔・入浴を控える
- 眼帯や保護メガネを外さずに付けておく
- 化粧・スポーツを控える
手術直後には傷口はふさがっていますが、目の表面についた傷は数日残ります。そのため、目の中に細菌を入れてしまう可能性のある行為、洗顔・入浴や、目を押さえることは控えてください。なお、首から下のシャワーであれば手術当日あるいは翌日から可能ですが、洗髪・洗顔は3~7日後からが目安となります。
また、眼帯や保護メガネは細菌の侵入を防ぐだけでなく、風やホコリ、紫外線などから目を守る役割もあります。手術当日は寝るときも外さないようにしましょう。
手術後の視力と見えかたの違和感・変化
手術後の視力や見えかたの回復のペースは人それぞれで、見え方が安定してくるまでには1~3ヶ月ほどかかる場合があります。
また、手術前には水晶体が濁っている状態でものを見ていたのに対して、手術後には濁りがなくなるため、これまでよりも目にたくさんの光が入ってくるようになります。その結果、手術後に少しまぶしさを感じるようになります。これは時間の経過とともに徐々に安定してきますが、長期間にわたり続くようであれば、医師に相談してください。
生活への影響と注意点
手術後1週間は目の表面についた傷が残っている可能性があり、目の中に細菌が入っていないか経過観察が必要な期間です。入浴や運動は控えるようにしましょう。通常通りの生活に戻るのは、およそ1ヶ月後が目安です。
白内障手術後の車の運転
目の保護のために、手術後は必要に応じて1週間程度眼帯をつけることがあります。視力の回復の程度には個人差がありますが、手術直後の運転は原則禁止です。眼帯が取れるタイミングか、医師の許可がおりるまでは車の運転は控えましょう。
白内障手術後の飲酒
白内障手術後のお酒は、傷口の炎症の悪化を招くおそれがありますので、飲酒量にもよりますが手術から1週間程度は控えてください。
白内障手術後の入浴・シャワー
首から下のシャワーであれば手術当日あるいは翌日から可能ですが、入浴により目に水や汗が入ることや、血圧を上昇させてしまうようなことは避けた方がよいでしょう。浴槽につかることは、1週間程度控えましょう。
白内障手術後の仕事や家事
仕事や家事は、軽作業であれば医師の指示を受けて翌日から無理のない範囲で行うことができます。なお、埃っぽい場所での作業は、手術後の目の表面についた傷から細菌が入りやすいため注意してください。
眼鏡を作成するタイミング
白内障手術前に使用していた眼鏡は術後、ほとんどの場合で合わなくなります。手術に使用する眼内レンズにもよりますが、単焦点レンズの場合であれば、ピントが合わない場所を見るために眼鏡での矯正が必要になります。
裸眼視力が安定するまでには、術後1〜2ヶ月程度必要です。生活に支障が出る場合は医師の相談のもと一旦その時の視力に合ったメガネを作成し、視力が安定した2~3ヵ月後に新しいメガネを作り直しましょう。
手術後の違和感で疑われる病気・後遺症
白内障手術が終わって視力の回復を待つうえで、光がまぶしく感じるという以外に、見えかたに違和感を覚える方もいらっしゃいます。手術後に起こりえる病気はいくつかあります。
飛蚊症
飛蚊症とは、視界に黒い異物のようなものや虫のようなものが飛んでいるように見える症状をいいます。視線を動かすと追いかけてくるような動きをし、かつ細かく揺れるため、その名のとおり目の前を蚊が飛んでいるかのように感じます。黒い異物の形や大きさはさまざまです。普段は気づかなくても、白いものや空を見たときに意識することが多いです。
目の中にあるゼリー(硝子体)の濁りが原因で起こることが多く、白内障の濁りをとることで、もともとあったゼリーの濁りを自覚しやすくなるためにおこります。手術後の急激な変化によって自覚症状が強くなりますが、ほとんどの場合2~3ヶ月もたつと気にならなくなることが多いです。
ただし、まれに白内障手術後に網膜剥離という病気を生じることがありますので、飛蚊症を感じたら、念のため医療機関を受診しましょう。
後発白内障
白内障手術後しばらく時間が経つと、もともと水晶体が入っていた袋(水晶体嚢)が濁りはじめ、再び視力が低下することがあります。この症状を後発白内障とよびます。
後発白内障は手術をしてから数ヶ月~数年後に発症することが多いですが、現在はレーザー照射によって視力回復治療を受けることができます。
嚢胞様黄斑浮腫
嚢胞様黄斑浮腫は、白内障手術の術後早期に稀に起きる、網膜のむくみや腫れのことです。
手術後には、医師から目薬を点眼することや、術後すぐの飲酒は行わないことなど説明を受けますが、その指示を正しく守れなかった場合に発症することが多くあります。また、糖尿病網膜症を抱えている方にも起こりやすい術後の症状です。
術後は決められた点眼を守る、検診を指示通りに受ける、注意事項を守る、を徹底することが大切です。
術後眼内炎
術後眼内炎は、手術時にできた傷から細菌が感染・増殖することによって、目の中に強い炎症を起こしている状態をいいます。
多くの場合では術後早期に起こりますが、手術後適切に点眼薬を使っていればほとんど発症することはありません。手術後に点眼をやめたりすることなく、医師の指示に従って通院や点眼を続けましょう。手術の翌日以降に急激に悪化する目の痛みや見えにくさを感じたら、できるだけ早く医師の診察を受けましょう。
網膜剥離
網膜剥離は、目の内側にある網膜と呼ばれる膜が剥がれ、視力の低下につながることもある病気です。
白内障の手術後に生じる可能性がありますが、その発症率は低いです。視野の一部が暗く感じるといった症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
手術後の定期検診
手術後6ヶ月間は、手術翌日、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後と定期的な検診が必要になります。術後に何か問題は無いか、見え方がしっかりと回復してきているかなど、検査で確認していきます。
また、手術後の目の状態によっては処方される点眼薬が変更されることもあります。自己判断はせずにきちんと通院し、医師の指示に従いましょう。
手術後に違和感があればすぐに医師の診断を受けましょう
白内障の手術後は、見えかたが安定するまでに時間がかかります。定期検査を忘れずに受けるとともに、違和感があれば眼科医に相談してください。傷口は手術が終わる時点でしっかりとふさがっていますが、目の表面についた傷は数日残ります。医師の指示をきちんと守り、無理のない生活を心がけましょう。