白内障は、ピント調節を行なっている水晶体が濁ってくる目の疾患で、「見えにくい」「かすむ」「まぶしい」といった症状が出てきます。こうした自覚症状が強くなってきた場合、濁った水晶体を取り除き、代わりにピントを合わせる役割をもつ人工の眼内レンズを入れる、白内障手術を受ける必要があります。
- 人工のレンズが劣化したらどうなるの?
- 一度手術を受けても、また白内障になるって聞いたけど?
- 多焦点レンズを入れてもそのうち眼鏡が必要になるの?
取り除いた水晶体の代わりに人工の眼内レンズを入れるとなると、こうした疑問を持たれる事があるかもしれません。また、これらの疑問は手術後すぐに起こるものではなく、もっと先。10年、20年後についてのものと言えるでしょう。
これらの疑問に「南大阪アイクリニック」渡邊医師に答えていただきました。
眼内レンズが劣化することは基本的にはありません
白内障手術を受けられるのは60代以上の方が多数を占めますが、40代、50代の方、中には10代で手術が必要になる方もおられます。若くして手術を受けることになれば、その分長い期間、手術後の眼と人生をともにすることになりますので、これらの疑問はとても重要なポイントだと思います。
『眼内レンズって劣化するの?』答えは基本的にはNOです。心配ありません。
しかし、「基本的には」とお答えしたのには理由があります。少し前の話になりますが、あるメーカーのレンズにglisteningやwhiteningという現象が見られました。前者はレンズ内に小さな水滴が見られる事、後者は薄く白い濁りが生じる事をいいます。これらが生じた場合にわずかにコントラストが悪くなるとの報告がありました。
ほぼ自覚症状につながらない事が多かったのですが、特に日本の医師がこの問題点を重要視し、製法を変更するにいたりました。また他のレンズ(厚労省未認可、個人輸入にて使用)においても濁りを生じ製法変更された事があります。
どちらの場合にも現在は製法が変更されていますし、現在までにその他の報告はありません。原因についても究明されていますので、絶対劣化しないと言いきる事はできませんが、ほぼないと考えています。
白内障が再発することはありません
では、白内障に2度なることはあるでしょうか?答えは絶対にありません。白内障の原因となる水晶体を除去していますので、再生することはありません。
しかし、眼内レンズを目の中に固定するために、水晶体の袋(=水晶体嚢)を目の中に残してあります。袋といっても細胞の集合体ですので、この細胞が手術後に増殖してくることにより、水晶体嚢に白い濁りが出ることがあります。これを後発白内障といいます。
白内障とは違いますが、白い濁りによって、あたかも白内障になったかのような症状が出てくることがあります。「友達が白内障に2回なった!」という話を聞いた場合は、この後発白内障のことだと思います。
病名に白内障という言葉がついているために話がややこしくなってしまいますが、後発白内障は厳密には白内障ではありません。また、視力に影響が出てくれば、YAGレーザーというもので、濁りを飛ばしてしまえば手術直後の見え方に戻ります。処置も1-2分で終わるようなものです。
乱視の変化やほかの目の疾患の発症により、また見えにくくなったと感じることがあります
「手術のあと、とても良く見えるようになったけど、また見えにくくなることはありますか?」こうしたご質問もいただくことがありますが、見えにくくなる可能性は考えられます。
- 乱視の変化
- 他の眼の疾患を発症
これらのことを考慮しておく必要があります。
先ほどもお話しましたが、レンズの劣化や手術を2回するということはなく、特に問題がなければ、ずっと気持ちよく生活が出来ると考えて頂いて問題ありません。
しかし、加齢に伴い乱視が強くなると乱視補正の眼鏡が必要になる場合があります。また、多焦点レンズをせっかく入れたのに、他の病気、例えば加齢黄斑変性症や緑内障のような視力に影響がでるような病気を発症した場合には、それらが原因となり視力が低下することがあります。
なお、「手術後よく見えるようになっていたけど、最近見えにくい」とご来院いただく方の中には、実はよく見えているのに、眼鏡の使い方が間違っている、あるいは手術後の感動が記憶に残りすぎているだけ、といった方もおられます。
手術をしたからもう大丈夫!と過信せず、6ヶ月から1年に一度は眼科で診察を受け、いつまでも良く見える目を保つよう心がけていただければと思います。
「手術をしても、また白内障になるのか?」「眼内レンズが悪くなったらどうするのか?」こうした疑問について、当サイト監修「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師が回答しています。Youtube動画もぜひご覧ください。
記事監修:「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師
- 2003年:近畿大学医学部 卒、近畿大学医学部眼科学教室 入局
- 2009年:府中病院 眼科、近畿大学医学部大学院医学研究科 卒
- 2011年:Brien Holden Vision Institute Visiting Research Fellow
- 2012年:近畿大学医学部 助教
- 2014年:近畿大学医学部 医学部講師
- 2016年:医療法人翔洋会 理事長 平木眼科 院長
- 2018年:南大阪アイクリニック 院長
クリニック情報
- 所在地:大阪府泉南郡熊取町大久保北3丁目174-6
- 電話番号:072-453-1750
- 診療時間:9:30~12:30、14:30~17:30
- 休診日:木曜午後、土曜午後、日曜
- 導入機器:フェムトセカンドレーザー白内障手術装置、「LenSx」、術中波面収差解析装置「ORA System」、白内障手術ガイドシステム「Verion」、超音波白内障手術装置「CENTURION VISION SYSTEM」など
記事監修
「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師
略歴
2003年近畿大学医学部眼科学教室入局。府中病院(和泉市)勤務、オーストラリア留学を経て、2014年より近畿大学医学部講師として白内障・角膜外来を担当。2016年より現職。
渡邊医師YouTubeチャンネル:
クリニック情報
- 所在地大阪府泉南郡熊取町大久保北3丁目174-6
- 診療時間9:30~12:30、14:30~17:30
- 休診日木曜午後、土曜午後、日曜
- 導入機器フェムトセカンドレーザー白内障手術装置、「LenSx」、術中波面収差解析装置「ORA System」、白内障手術ガイドシステム「Verion」、超音波白内障手術装置「CENTURION VISION SYSTEM」など