目がかすむ、視力が低下するなど、見え方に違和感が生じている場合、白内障やほかの目の病気の可能性も考えられます。白内障のほかにも、目の病気の治療・手術にはさまざまな種類があります。こちらでは代表的な眼科手術とその概要、費用などを紹介していきます。
近年では医療技術の発達から、目の病気に対する手術治療や近視矯正の選択肢が広がっています。疾患の種類ごとに、手術の内容を見ていきましょう。
眼科手術の種類
手術を伴う眼科の疾患の中で、最も多いのが白内障です。白内障は加齢に伴い発症数が増加していき、早ければ40代で発症、80代ではほとんどの方に何らかの症状が見られるようになります。
その他の眼科手術では、レーシックやICL手術のほか、緑内障、糖尿病網膜症、網膜剥離などが症例の多い手術となります。
それぞれの手術について、適応条件や手術費用、入院の有無、および乱視など症状に対する適応条件などを説明していきます。
白内障手術とは
白内障は、主に加齢などの原因により目の水晶体が濁る病気で、手術で治療が可能です。
手術では濁った水晶体を取り除き、極小の眼内レンズ(人工レンズ)を挿入します。所要時間はわずか10分~20分程度。麻酔は点眼薬またはほぼ無痛の注射にて行い、術中や術後の痛みもほとんどありません。
白内障は症例数が非常に多く、すでに術式が確立された安全な手術です。通常は片目ずつ、日帰り手術を受けられる方が大半ですが、内科の持病がある方などは入院手術を行う場合があります。
適応 | 水晶体の濁りによる目のかすみ、まぶしさなどで日常生活に不都合が生じている場合。投薬では治癒が期待できないため、ほとんどの場合は手術で対応します。 |
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入院の有無 | ほぼ日帰り手術で対応可。内科との連携が必要な場合は入院手術となるケースもあります。 |
白内障の手術について、詳細は下記記事も合わせてご確認ください。
白内障手術の費用
白内障手術は使用する眼内レンズによって費用が大きく変動します。
保険診療適用となるのは単焦点レンズ+超音波手術で、保険料負担額により変動しますが、片目1万5000円~4万5千円が目安です。ただし、単焦点レンズでもレーザー手術の場合は自由診療となり、片目25万~35万円が目安となります。
また、先進医療の対象であった多焦点レンズは2020年4月より制度が変わり、従来の先進医療から保険診療+選定療養となりました。費用は医療機関により異なりますが、技術料自己負担1~4万円+差額レンズ代20~30万円が目安になると考えられています。
緑内障手術とは
緑内障とは、視神経の障害により視野が狭くなる進行性の病気です。眼圧や眼循環障害が一因といわれており、40歳以上の日本人の約6%が罹患しているというデータがあります。
治療には主に眼圧を下げる点眼薬やレーザー治療が用いられますが、症状の進行具合によっては手術が必要になります。手術は房水の流出経路を再建する「線維柱帯切開術」と新しい排出路をつくる「線維柱帯切除術」の2種類に加え、2012年より「インプラント手術」が保険適用になりました。
入院に関しては、近年では日帰り手術を行う病院が増えてきましたが、5日~2週間程度の入院が必要となる場合もあります。なお、症状によっては白内障と同時に手術を行うことがあります。
適応 | 薬剤、レーザーによる治療で眼圧の上昇が抑えられない場合 |
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入院の有無 | 症状により日帰り手術も可能。5日~2週間程度の入院が必要な場合もあります。 |
緑内障手術の費用
症状や医療機関により費用にはバラつきがありますが、保険診療3割負担の場合、線維柱帯切除術が片目およそ8万円、線維柱帯切除術が片目およそ8万円、インプラント手術が片目およそ12万円。なお、これらには術後のメンテナンス費用は含まれていません。
また、入院を伴う場合には別途費用が発生します。
網膜硝子体手術とは
硝子体は目の中にあるゼリー状の組織で、さまざまな病気に関与していることが分かっています。網膜硝子体手術の適応となる病気は増殖性糖尿病網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、黄斑前膜、黄斑円孔、網膜剥離など多岐に渡ります。
手術では、眼球に開けた穴から病変部を吸引除去したり、網膜にレーザーを照射したり、ガスを注入するなど、病状に合わせた処置が行われます。また、網膜剥離の場合は強膜バックル術が行われることもあります。
ほとんどの場合は局所麻酔で行い、症状によっては日帰り手術も可能です。所要時間は処置の内容により、20分から1時間程度と差があります。
適応 | 網膜剥離、糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑前膜、ぶどう膜炎など、硝子体の組織を取り除く必要がある症状。 |
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入院の有無 | 症状によりますが、日帰り手術が可能です。手術内容、医療機関によっては1週間~10日ほどの入院が必要な場合があります。 |
網膜硝子体手術の費用
網膜硝子体手術はさまざまな病気に対応する手術であるため、術式や処置の内容が個人によって異なり、費用にも大きな差が生じます。手術には保険が適用され、高額医療費の申請も可能です。 ※高額医療費の還付について、詳しくはこちらをご確認ください。
おおよその費用の目安としては、網膜前膜や黄斑円孔等に行われる硝子体茎離断術(付着組織を含む)は12万円、硝子体出血等に行われる(その他のもの)は9万円の自己負担に薬代、入院費用等が加算されます。
硝子体注射とは
硝子体注射とは「VEGF阻害剤」という薬剤を注入する手術で、加齢黄斑変性症、近視性脈絡膜新生血管症の他、糖尿病網膜症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対し行われます。
従来から行われてきたレーザー照射や硝子体手術による治療に比べ短時間で効果が実感できるのが特徴で、翌日に改善が見られる場合もあります。脳卒中や網膜剥離、眼内炎などの重篤な合併症の報告はありますが、その発生は稀で、白目に注射するのみなので、ごく短時間で終了するのも大きなメリットといえるでしょう。
ただし、即効性はあるものの持続期間が短く、約1~2カ月で効果が消失してしまうことも。また、初期治療として約1カ月ごとに3回ほどの治療が必要な事、薬剤の費用が高いというマイナス面もあります。
適応 | 加齢黄斑変性症、近視性脈絡膜新生血管症、糖尿病網膜症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜中心静脈閉塞症 |
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入院の有無 | 不要 |
硝子体注射の費用
硝子体注射による治療は、保険診療の対象となります。ただし新しい治療のため薬剤の価格が高く、片目1回の費用は保険診療3割負担の方で、およそ5万円ほどになります。
なお、高額療養費制度が適用される場合がありますので、受診の際にご確認ください。
レーシック手術とは
視力矯正の外科手術として、2000年1月に日本でも厚生労働省の許可が下りたレーシック手術。エキシマレーザーで角膜を削ることで、屈折率を変えて近視、乱視、遠視を矯正する手術です。このとき、角膜にフラップという蓋を作り、削った部分にかぶせることで表面を保護します。
レーシック手術は痛みやダメージが少なく、短期間に視力が回復することが特徴です。メガネやコンタクトレンズから解放されるメリットがありますが、その一方で受けられる条件やデメリットもあることを知っておきましょう。
まず、矯正できる視力には限度があり、手術後の近視や老眼の進行を防ぐことはできません。また、手術後に夜間の視力低下やドライアイを感じる場合があり、まれに角膜の感染症を発症する場合があります。さらに、白内障になった場合、検査の正確性に支障をきたす可能性があります。
適応 | 18歳以上で眼疾患のない方の近視(強度近視を除く)、乱視、遠視 |
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入院の有無 | 不要 |
レーシック手術の費用
レーシック手術は保険診療の対象外で、すべて自由診療となります。そのため、費用は病院によってまちまちで、両目でおよそ15万円~35万円と、大きな差が見られます。
また、術前の検査や術後の診察に費用が発生する場合がありますので、手術の際はしっかりと費用の確認をするようにしましょう。
ICL手術とは
角膜を削るレーシック手術に抵抗がある方や、よりクリアな視界を求める方に注目されている「ICL手術」。虹彩の後ろに眼内コンタクトレンズを挿入することで、良好な視界が得られる最新の視力矯正手術です。2010年2月に厚生労働省に術式が認可され、2014年には日本で開発された房水の循環を保てる穴あきICLも認可されました。
ICL手術は鮮やかな視界だけでなく、紫外線を90%カットし、レーシックの課題である近視の戻りも少ないことがメリットです。また、レーシックでは非適応の強度近視にも対応が可能で、切開口はわずか3㎜。点眼麻酔を用いて短時間で終了し、レンズの交換や取り出しも可能です。
ただし、術前検査によりオーダーレンズを作る必要があるため、時間と費用がかかります。また、稀にレンズの度数が合わないことや、水晶体にレンズが接触して白内障を引き起こす可能性があります。これらの特徴を知った上で、レーシック手術と比較検討してみると良いでしょう。
適応 | 眼疾患のない方の近視、乱視、遠視 |
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入院の有無 | 不要 |
ICL手術の費用
ICL手術は保険診療の対象外で、すべて自由診療となります。比較的新しい手術ということもあり、病院によって費用の差が大きく、術前検査費用や乱視矯正費用などがオプションとして加算されることもあります。
およその目安としては、両目乱視なしで50万円~70万円。乱視のある方はプラス10万円程度が加算されます。
白内障を中心とした目の手術について、当サイト監修「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師が解説しています。術前の疑問や不安を解消する一助として、ぜひYoutube動画もご覧ください。
眼科手術は最新の情報を元に最良の選択を
数ある眼科手術の中から、多くの症例が見られるものを紹介してきました。医学は日進月歩であるため、次々と新しい術式や薬剤が開発されています。手術を受ける際には最新の情報を元に、ぜひ最良の選択をしてください。
見え方の違和感に悩み、治療・手術を検討の際の参考になりましたら幸いです。