白内障手術は、角膜切開、前嚢切開、水晶体核分割、水晶体吸引(水晶体嚢は残す)、眼内レンズ挿入・嚢内固定、創部閉鎖の順に行われます。
乱視矯正眼内レンズや多焦点眼内レンズの登場以来、手術後の裸眼視力の向上を目的として、白内障手術関連機器は大きく発展してきました。今回のテーマであるイメージガイドシステムは、現在VERION(Alcon社)とCALLISTO eye(Zeiss社)の2機種が日本において使用されています。
これらイメージガイドシステムは手術顕微鏡とつながっており、術者の見ている顕微鏡画像上にイメージガイドを提示してくれます。
イメージガイドシステムの機能
イメージガイドシステムは、手術前に撮影した個別の眼のデジタル情報を元に、さまざまな役割を果たします。
- 手術眼認証
- 角膜切開位置のガイド
- 前嚢切開の大きさの表示
- 挿入した眼内レンズの中心位置の提示
- 乱視矯正レンズの乱視軸マーカーの表示
乱視矯正レンズの乱視軸のマーキングは、イメージガイドシステムが登場するまでは、手術前に医師が手術をする眼に直接マーキングをしなければならないものでした。
これらの手順をデジタルマーカーで適切に表示されるようになったことは、正確な手術を行ううえで大きな助けとなっています。
イメージガイドシステムの使用による術後の乱視矯正効果
では、乱視矯正レンズを使用した場合に、医師の手によるマニュアルマーキングとイメージガイドシステムを用いたデジタルマーキングにおいて、術後の乱視矯正効果に差が出るものなのでしょうか?
実際の論文報告から、その効果を見ていきましょう。
術後の乱視矯正効果の論文報告
Webersら(※1)やMayerら(※2)の報告を含めた5つの論文の結果を用いて、Zhouら(※3)がメタアナリシスを行った結果によると、有意にデジタルマーキングの方が術後の乱視矯正効果が高いと報告されています。
また、Linら(※4)はVERIONを用いた症例と、外来用眼科顕微鏡を用いたマーキングを行った症例、直接肉眼でマーキングを行った症例の3群において、VERION群と顕微鏡群は肉眼群よりも有意に術後の乱視軸のずれが少ないと報告しています。
これらの報告からは、少なくとも正確なマニュアルマーキングとデジタルマーキングはほぼ同等の結果であると考えられます。しかしながら、マニュアルマーキングは手術直前に外来の顕微鏡を用いて正確に行う必要があり、術者にとっても手術を受けられる方にとっても負担になるものであることと考えられます。
Huraら(※5)はVERONとCALLISTO eyeのどちらが優れているかを検証し、概ね同等の効果があり、どちらかの有意性は確認できなかったと報告していますので、手術を受けられる施設のイメージガイドシステム使用の有無を確認されると良いでしょう。
イメージガイドシステムは正確な位置での角膜切開や眼内レンズの中心固定においても重要
先述しましたように、イメージガイドシステムは乱視矯正用眼内レンズ使用時にもっとも効果を発揮するものですが、術後の乱視を減らすために必要な正確な位置での角膜切開や、眼内レンズの中心固定においても重要です。
フェムトセカンドレーザー白内障手術装置や術中リアルタイム眼情報解析装置などの先進技術とともに、多くの医療機関に導入される日がくれば、皆さんの手術後裸眼視力の向上に大きく寄与する技術であることは間違いありません。
参考文献・画像引用
(※1)J Cataract Refract Surg. 2017 Jun;43(6):781-788. doi: 10.1016/j.jcrs.2017.03.041.
(※2)J Cataract Refract Surg. 2017 Oct;43(10):1281-1286. doi: 10.1016/j.jcrs.2017.07.030. Epub 2017 Oct 19.
(※3)J Cataract Refract Surg. 2019 Sep;45(9):1340-1345. doi: 10.1016/j.jcrs.2019.03.030.
(※4)Clin Ophthalmol. 2017 Feb 8;11:311-315. doi: 10.2147/OPTH.S124580. eCollection 2017.
(※5)J Refract Surg. 2017 Jul 1;33(7):482-487. doi: 10.3928/1081597X-20170504-02.
記事監修:「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師
- 2003年:近畿大学医学部 卒、近畿大学医学部眼科学教室 入局
- 2009年:府中病院 眼科、近畿大学医学部大学院医学研究科 卒
- 2011年:Brien Holden Vision Institute Visiting Research Fellow
- 2012年:近畿大学医学部 助教
- 2014年:近畿大学医学部 医学部講師
- 2016年:医療法人翔洋会 理事長 平木眼科 院長
- 2018年:南大阪アイクリニック 院長
クリニック情報
- 所在地:大阪府泉南郡熊取町大久保北3丁目174-6
- 電話番号:072-453-1750
- 診療時間:9:30~12:30、14:30~17:30
- 休診日:木曜午後、土曜午後、日曜
- 導入機器:フェムトセカンドレーザー白内障手術装置、「LenSx」、術中波面収差解析装置「ORA System」、白内障手術ガイドシステム「Verion」、超音波白内障手術装置「CENTURION VISION SYSTEM」など
記事監修
「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師
略歴
2003年近畿大学医学部眼科学教室入局。府中病院(和泉市)勤務、オーストラリア留学を経て、2014年より近畿大学医学部講師として白内障・角膜外来を担当。2016年より現職。
渡邊医師YouTubeチャンネル:
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- 所在地大阪府泉南郡熊取町大久保北3丁目174-6
- 診療時間9:30~12:30、14:30~17:30
- 休診日木曜午後、土曜午後、日曜
- 導入機器フェムトセカンドレーザー白内障手術装置、「LenSx」、術中波面収差解析装置「ORA System」、白内障手術ガイドシステム「Verion」、超音波白内障手術装置「CENTURION VISION SYSTEM」など