白内障は、ピントを合わせる役割をもつ水晶体が濁ってくることにより、視力の低下や、まぶしさ、かすみなどの症状が現れる目の病気です。目薬による治療もありますが、進行を遅らせる効果はわずかにあるとしても、根本的に治すには手術しかありません。こちらでは術式のひとつである「レーザー手術」に着目し、そのメリットや優れている点を解説していきます。
白内障手術の概要と流れ
水晶体には袋(水晶体嚢)と中身(核、皮質)があり、濁るのは中身の部分です。白内障の手術では、ピントを合わせる働きをしている水晶体の中身を取り出しますので、その代わりになる人工のレンズ(眼内レンズ)を水晶体の袋の中に固定する必要があります。
実際の手術は以下の順序で進んでいきます。
1.水晶体嚢の前の部分に5mm程度の円形の穴をあける
2.黒目のふちを2mm程度切開する
3.核を細かく分割する
4.核・皮質を取り除く
5.眼内レンズを入れる
約20年前から現在まで、手術方法としては超音波手術が一般的で、上記の工程のすべてを手作業で行います。
一方、近年登場したレーザー手術では、これらの1、2および3の工程をコンピューター制御のフェムトセカンドレーザーが行い、4、5の部分だけを手作業で行います。
白内障手術の概要と流れ
水晶体には袋(水晶体嚢)と中身(核、皮質)があり、濁るのは中身の部分です。白内障の手術では、ピントを合わせる働きをしている水晶体の中身を取り出しますので、その代わりになる人工のレンズ(眼内レンズ)を水晶体の袋の中に固定する必要があります。
実際の手術は以下の順序で進んでいきます。
1.水晶体嚢の前の部分に5mm程度の円形の穴をあける
2.黒目のふちを2mm程度切開する
3.核を細かく分割する
4.核・皮質を取り除く
5.眼内レンズを入れる
約20年前から現在まで、手術方法としては超音波手術が一般的で、上記の工程のすべてを手作業で行います。
一方、近年登場したレーザー手術では、これらの1、2および3の工程をコンピューター制御のフェムトセカンドレーザーが行い、4、5の部分だけを手作業で行います。
超音波手術とレーザー手術を海外論文から比較
手術を受けられる方にとって関心が高いのは、まずは痛みの有無、手術時間、合併症、手術後の視力向上。加えて目の前にいるドクターは手術が上手なのか?経験はどれくらいあるのか?といったところでしょうか。これらの要素において、どちらの手術がより優れているのか?海外の論文をもとに考えてみたいと思います。
手術中に痛みを感じることはほとんどない
まずは痛みの有無について。こちらは論文であまり論じられることではありません。医療機関によってさまざまですが、点眼麻酔により大半の痛みは取れるので、手術中に痛みを感じることはほとんどありません。ただし痛みは取れるものの、触られている感じ、まぶしさは感じてしまいます。その点のみ、少し気持ち悪さが残ります。
実際に手術にかかる時間はほぼ変わらない
次に、手術時間について。一般的な白内障手術においては、従来の超音波手術に比べてレーザー手術の方が5分程度は長くかかります。これは2台の器械を用いて手術を行うためであり、実際に手術にかかる時間というよりは、準備や移動によるものと考えるとよいでしょう。
100例程度の経験により高まるレーザー手術の安全性
では、合併症についてはどうでしょうか?
手術中に生じる合併症で最も問題になるのが、水晶体嚢がやぶけてしまうことです。逆に嚢が破けさえしなければ、手術中に起こる可能性のある合併症の大部分は回避できます。Roberts HWらの報告(※1)では、水晶体前嚢の破綻が生じてしまった症例はレーザー手術に多く、後嚢が破けてしまった症例は超音波手術で多かったとされており、後嚢が破れた症例の半数でより重篤な水晶体の硝子体内落下を生じたと記されています。
一方、Nagy ZZらの報告(※2)ではLensX (Alcon)について、Day ACらの報告(※3)ではCatalys (J&J)について、合併症の発生頻度に関する記載がなされており、ラーニングカーブ(学習曲線のことで、練習することによって技術の習得が進むこと)が存在するため、特にレーザー手術機器を導入してからの初めの100例に注意を要するとされています。
これらの報告をまとめると、100例程度の経験をつめば、レーザー手術はより安全な手術方法になると考えられるでしょう。
術者の技量に依存しないレーザー手術
また過熟白内障などの一般的に手術が困難な例についてみてみると、Chee SPら(※4)やZhu Y(※5)らは、不完全な前嚢切開には注意を要するが、レーザー手術は超音波手術に比べて安全性が高い。一方で後嚢破損などについては有意な差がない。レンズの固定位置はレーザー手術が優れていたと報告しています。
手術の熟練に要する期間はレーザー手術が優れ、術者によらず正確な手術となる可能性が高く、手術を受ける立場としてはより安心して手術に望めるのではないでしょうか。
国内においてもレーザー手術はさらに普及していく
以上をまとめますと、フェムトセカンドレーザーの有用性については論文や学会などで多く報告されていますが、白内障進行度による合併症の発生頻度の比較など、十分に議論されていないこともまだまだあります。また、海外と日本における医師の技量の差についても考慮する必要があります。
実際に使用している立場からは、フェムトセカンドレーザー白内障手術は、ごく簡単な守るべき注意点の確認を怠らなければ、より安全で、医師の技量を問わず安心して手術を受けて頂けるものであると思います。
参考文献
(※1)Roberts HW et al. J Cataract Refract Surg. 2019 Jan;45(1):11-20.
(※2)Nagy ZZ et al. J Cataract Refract Surg. 2019 Mar;45(3):337-342
(※3)Day AC et al. BMJ Open. 2016 Jul 27;6(7)
(※4)Chee SP et al. Br J Ophthalmol. 2019 Apr;103(4):544-550
(※5)Zhu Y et al. J Cataract Refract Surg. 2019 Mar;45(3):337-342
記事監修:「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師
- 2003年:近畿大学医学部 卒、近畿大学医学部眼科学教室 入局
- 2009年:府中病院 眼科、近畿大学医学部大学院医学研究科 卒
- 2011年:Brien Holden Vision Institute Visiting Research Fellow
- 2012年:近畿大学医学部 助教
- 2014年:近畿大学医学部 医学部講師
- 2016年:医療法人翔洋会 理事長 平木眼科 院長
- 2018年:南大阪アイクリニック 院長
クリニック情報
- 所在地:大阪府泉南郡熊取町大久保北3丁目174-6
- 電話番号:072-453-1750
- 診療時間:9:30~12:30、14:30~17:30
- 休診日:木曜午後、土曜午後、日曜
- 導入機器:フェムトセカンドレーザー白内障手術装置、「LenSx」、術中波面収差解析装置「ORA System」、白内障手術ガイドシステム「Verion」、超音波白内障手術装置「CENTURION VISION SYSTEM」など
記事監修
「南大阪アイクリニック」渡邊敬三医師
略歴
2003年近畿大学医学部眼科学教室入局。府中病院(和泉市)勤務、オーストラリア留学を経て、2014年より近畿大学医学部講師として白内障・角膜外来を担当。2016年より現職。
渡邊医師YouTubeチャンネル:
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- 診療時間9:30~12:30、14:30~17:30
- 休診日木曜午後、土曜午後、日曜
- 導入機器フェムトセカンドレーザー白内障手術装置、「LenSx」、術中波面収差解析装置「ORA System」、白内障手術ガイドシステム「Verion」、超音波白内障手術装置「CENTURION VISION SYSTEM」など